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期 日:2023年10月21日(土)

会 場:中村学園大学

【講演会】

1)「福岡の郷土料理と伝統食品」 松隈美紀 氏 (中村学園大学栄養科学部フード・マネジメント学科教授 )

2)「九州に伝わるあご(トビウオ)の食文化を広める取り組み」

  松尾孔靖 氏 (九州あご文化推進委員会 リーダー/株式会社久原本家 )

3)「福岡からの魚卵食を考える」磯野隆尚 氏(九州丸一食品株式会社 品質管理室室長 )

4)「博多の水炊きと華味鳥」 河津善博 氏 (トリゼンホールディングズ株式会社 代表取締役)


第75回伝統食品に関する講演会報告
会長 鷲尾圭司

 2023年10月21日(土)中村学園大学(福岡市)において秋の講演会「九州・福岡の食文化」が開催されました。秋の諸行事が重なったと見え、参加者が40数名とやや淋しかったものの、中村学園大学の学生さんや先生方も参加していただき、熱心に耳を傾けていただけました。
 開催にあたっては実行委員長の木村秀喜先生(中村学園大学教授)のご尽力と大学側のご理解もあって、素晴らしい会場をお貸しいただきました。
 講演は4題で、福岡の食に迫ってみました。
 第一題は中村学園大学栄養科学部フード・マネジメント学科教授の松隈美紀先生による「福岡の郷土料理と伝統食品」が発表され、福岡県の地域別農水産物の紹介とその特性を詳しく解説いただきました。ほぼ網羅されたかと思いましたが、まだ「うどん」と「ラーメン」もあると気づき、福岡の食の奥深さを痛感いたしました。
 第二題は「九州あご出汁文化推進委員会」リーダーの松尾孔靖氏(株式会社久原本家)と星野莉奈氏(同)による「九州に伝わるあご(トビウオ)の食文化を広める取組」が発表され、若手チーム活動として「あご食文化」をもつ平戸や上五島と屋久島の漁村と連携して「あご出汁」にまつわる研究と広報活動などの取組が紹介されました。
トビウオの生態から、低脂肪高タンパクの食材であり、干すと美味しい出汁が取れるのが特徴です。その良さは九州では知られていますが、全国的にはまだ広まっていないのと、次の世代にも継承したい食文化であることを研究と普及実践を合わせて周知する活動に取り組んでいます。
 第三題は九州丸一食品株式会社品質管理室長の磯野隆尚氏による「福岡から魚卵食を考える」が発表され、「辛子明太子」という福岡の名産品の由来を原料の原産地である朝鮮半島からたどり、戦後にかけて下関に渡来して日本食に合わせる工夫がなされ、やがて博多の「ふくや」創業者の川原俊夫氏が今日のスタイルを確立し、福岡の名産品に育ってきたことが紹介されました。さらに、食品製造の工夫や苦労話も交えて、伝統食品製造の現場の置かれている状況や課題にも熱弁が振るわれました。
 第四題はトリゼンホールディングズ株式会社代表取締役の河津善博氏による「博多の水炊きと華味鳥」が発表され、博多の味といわれる「水炊き」の由来と広がりを紹介されるとともに、トリゼンフーズの歩みとして養鶏から鶏肉の供給販売、そして水炊きの料理店としての展開、さらには産業廃棄物となりがちな鶏糞を活用した有機肥料の開発など、SDGsを意識した企業の取組を解説いただきました。さらには、本業は次代に譲るとともに海にも関心を向け、いまではアサリの復活に意欲を向けていると快活に話されました。
 以上の講演に、会場は熱気に包まれ、大変刺激になったと好評をいただきました。
 詳細は会誌「伝統食品の研究50号」に掲載されますので、お楽しみに。
 なお、本講演会は一般財団法人東洋水産財団の助成を頂いております。ここに感謝の意を表します。

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